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話題になっていた宮島未奈さんの『成瀬は天下を取りにいく』を読んで、とても面白かったので、「他の作品も読んでみたい」と思いました。
そこで手に取ったのが『婚活マエストロ』です。
タイトルだけを見ると、婚活をテーマにした恋愛小説という印象を受けます。
私は結婚しているので、婚活パーティーや婚活アプリとは縁がありません。「自分が読んで楽しめるのかな」という気持ちも少しありました。
それでも、宮島未奈さんならどんな物語を書くのだろうという期待のほうが大きく、読み始めました。
婚活を通して描かれる「人」
この作品は、単に婚活を描いた小説ではありません。
主人公の猪名川健人は、ライターとして婚活の世界を取材することになります。読者も猪名川と同じ目線で婚活パーティーに足を踏み入れるので、婚活を知らない私でも自然と物語の世界に入ることができました。
婚活パーティーが舞台ですが、本当に印象に残るのは、そこで出会う人たちの考え方や人柄です。
誰もが少し不器用で、迷ったり悩んだりしながら、自分なりに前へ進もうとしています。
そして、タイトルにもなっている「婚活マエストロ」の鏡原奈緒子の存在も魅力的でした。
参加者一人ひとりをよく観察し、その人の性格や思いをくみ取りながら場をまとめていく姿は、まさに「マエストロ」という呼び名がぴったりです。人を見極める力や、さりげない気配りには何度も感心させられました。
宮島未奈さんの作品を読んでいていつも感じるのは、登場人物を見る目の温かさです。
完璧な人ばかりではなく、空回りしたり、考えすぎたりする人たちが描かれています。でも、それが妙にリアルで、「こういう人、いるよな」と自然に思えてきます。
読み進めるうちに、それぞれの登場人物を応援したくなり、気づけば物語に引き込まれていました。
派手な展開が続く作品ではありませんが、その分、一人ひとりの人柄や心の動きが丁寧に描かれていて、読後には温かい気持ちが残る小説でした。
クスッと笑える空気感も魅力
『成瀬は天下を取りにいく』でも感じましたが、宮島未奈さんの作品には、思わずクスッと笑ってしまう場面があります。
決して大げさな笑いではありません。
登場人物同士の会話や、ちょっとしたやり取りが絶妙で、読みながら自然と口元が緩みます。
テンポよく読めるので、「今日は少しだけ」と思って読み始めても、気がつけばページが進んでいました。
小説だからこそ味わえる面白さ
私はこれまで、小説をそれほど読んできたわけではありません。
どちらかというと、仕事に役立つ本や実用書を読むことが多かったと思います。
そんな私が『婚活マエストロ』を読んで感じたのは、小説には自分が経験したことのない世界を体験できる面白さがあるということです。
婚活パーティーの雰囲気や、プロフィールカードを使ったやり取り、参加者同士の距離の縮め方など、私自身には縁のない世界でしたが、「こんなふうに人と出会うんだ」「こんなことを考えながら相手と向き合うんだ」と、猪名川と一緒に取材をしているような気持ちで読むことができました。
もちろん小説なのでフィクションではありますが、自分では経験しないことを追体験できるのは、小説ならではの魅力だと感じました。
おわりに
『成瀬は天下を取りにいく』がきっかけで読んだ『婚活マエストロ』でしたが、今回も宮島未奈さんらしい、人を見る目の温かさを感じる作品でした。
婚活というテーマだけを見ると、自分とはあまり関係のない小説に思えるかもしれません。
でも、ライターである猪名川健人の視点を通して婚活の世界をのぞき、人と人との出会いや、それを支える鏡原奈緒子の仕事ぶりに触れるうちに、最後まで夢中になって読んでいました。
最近は少しずつ小説を読む機会が増えていますが、「知らない世界を体験できる」という小説の魅力を、改めて感じた一冊でした。
次は宮島未奈さんのどの作品を読もうか、そんな楽しみがまた一つ増えました。