新型コロナウイルス感染症を「2類相当」から「5類相当」へ見直すべきか議論されていますが、そもそも、使われている「類」というのは何なのか、「5類相当」になると何が変わるのか、調べてみました。
医療機関による届出の仕組み
医療機関は、感染症法に基づいて、感染症の発生や流行を探知し、まん延を防ぐための対策や、医療従事者・国民への情報提供に役立てるために、対象の感染症を診断した際に都道府県に届出をすることを求められています。この届出があるから毎日の感染者数を発表できるのですね。この届出をする場合の感染症を表1のとおり分類しています。
新型コロナウイルス感染症は「新型インフルエンザ等感染症」に分類されており、「2類相当」の扱いとされています。
(表1)感染症の分類
分類 | 分類の考え方 | おもな感染症 |
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一類感染症 | 感染力や罹患した場合の重篤性などに基づく総合的な観点からみた危険性:極めて高い | エボラ出血熱、クリミア・コンゴ出血熱、ペストなど |
二類感染症 | 感染力や罹患した場合の重篤性などに基づく総合的な観点からみた危険性:高い | 鳥インフルエンザ (H5N1)、結核、SARSなど |
三類感染症 | 感染力や罹患した場合の重篤性などに基づく総合的な観点からみた危険性:高くないものの、特定の職業に就業することにより感染症の集団発生を起こしうる感染症 | コレラ、赤痢、O157感染症など |
四類感染症 | 一類~三類感染症以外のもので、主に動物等を介してヒトに感染 | デング熱、狂犬病など |
五類感染症 | 国民や医療関係者への情報提供が必要 | 季節性インフルエンザ、手足口病、突発性発疹など |
新型インフルエンザ等感染症 | 新たに人から人に伝染する能力を有することとなったウイルスを病原体とするインフルエンザであって、一般に国民が当該感染症に対する免疫を獲得していないことから、当該感染症の全国的かつ急速なまん延により国民の生命及び健康に重大な影響を与えるおそれがある | 新型コロナウイルス感染症など |
指定感染症 | 一~三類および新型インフルエンザ等感染症に分類されない既知の感染症の中で、一~三類に準じた対応の必要が生じた感染症(政令で指定、1年限定) | |
新感染症 | ヒトからヒトに伝染する未知の感染症であって、重篤かつ、国民の生命及び健康に重大な影響を与えるおそれがある |
「5類相当」になったらどう変わるのか
- 法律に基づいた行動の制限がかけられなくなるため、感染拡大が懸念されます。ただし、都道府県をまたぐ移動の制限などをしていない現状からすると影響はほとんどないと考えられます。
- 医療費の公費負担がなくなるので、自己負担が発生します。いつまでも公費負担というわけにはいかないのかもしれません。
- 感染者数の全数把握をしなくなるので、医療現場の負担が軽減されます。ただし、重症者・重症化リスクの高い人の状況も把握できなくなります。
- 現状はコロナ病床を持つ指定医療機関に入院することになっていますが、それがはずれますので、指定医療機関以外の医療機関でも入院ができるようになります。ただし、医療現場が本当に対応できるかは別問題となります。
(表2)感染症分類ごとの対応
分類 | 外出自粛要請 | 入院勧告 | 就業制限 | 無症状者への適用 | 全数把握 | 医療費自己負担 |
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一類感染症 | × | 〇 | 〇 | 〇 | 有 | 無 |
二類感染症 | × | 〇 | 〇 | × | 有 | 無 |
三類感染症 | × | × | 〇 | × | 有 | 有 |
四類感染症 | × | × | × | × | 有 | 有 |
五類感染症 | × | × | × | × | 有(一部は定点把握) | 有 |
新型コロナウイルス感染症 | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 | 有 | 無 |
※全数把握:全ての医師が、全ての患者の発生について届出を行うこと
※定点把握:指定した医療機関のみが届出を行うこと